労務情報

2025.02.19

株式等の譲渡にかかる税金は?申告の要否や贈与となる場合もあわせて解説

株式等の譲渡とは、株式等を他人に売却または贈与する行為を指しますが「税金がどれくらいかかるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では、株式等の譲渡に関する税金の仕組みや計算方法について解説していきます。
また、申告が必要なケースや贈与の場合の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

1.株式等の譲渡にかかる税金はいくら?

株式等を売却して対価を得た場合や、無償で他人に渡した場合でも税金がかかります。
株式等の譲渡にかかる税金にはどのようなものがあるか、それぞれの計算方法について解説していきます。

 

1-1.株式等の譲渡でかかる税金の種類

株式等の譲渡では、売買により譲渡される方が個人の場合は、所得税・復興特別所得税・住民税が、個人の方が個人の方から無償で譲り受けた場合は贈与税が、譲渡される方が法人の場合は法人税等がかかります。

また、亡くなった方の株式等を相続した場合は相続税が発生します。

 

1-2.個人の場合

個人が株式等を譲渡して売却益が発生した場合、所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。
株式等の譲渡による所得は「分離課税」といい、ほかの所得と別で税金の計算を行う仕組みとなっています。
例えば会社に勤務して給与を受け取っており、不動産と株式等の売買でも収入がある方の場合、給与や不動産の所得とは別にして税金の計算をします。
税率は所得税が15%、復興特別所得税が2.1%、住民税が5%、です。
また、株式等を無償で受け取った場合は贈与税がかかり、亡くなった方から株式等の相続をした場合は相続税がかかります。
申告期限は、所得税と復興特別所得税は売却した翌年の2月16日~3月15日まで、贈与税は株を受け取った翌年の2月1日~3月15日までです。

相続税は被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10カ月以内が期限です。
住民税は所得税の確定申告を基に市区町村が計算を行ってくれるため、申告の必要はありません。

 

1-3.法人の場合

法人が株式等を売却した場合、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税(まとめて法人税等)がかかります。
法人税等の税率は期末の資本金額や所得、収入金額により異なり、税率は30~35%程度です。
また、法人の場合は住民税も自分で申告する必要があります。

申告期限は事業年度終了の日の翌日から2カ月以内です。

 

1-4.外国株式を譲渡した場合

外国の株式等を譲渡した際の税金に関して、税金の計算方法や税率は国内株式と同じです。
ただし、外国株式の場合、株式等の売却による所得に為替が影響するので注意しましょう。
例えば、株価100ドルで1ドル=100円のときに株式等を購入した場合、購入価格は円では10,000円です。
この購入した株式を1ドル=95円のときに株価120ドルで売却した場合、売却額は円換算されて11,400円となり、購入価額の10,000円を差し引いた売却益1,400円に対して税金が課せられます。

 

2.株式等の譲渡にかかる税金の申告について

株式等の譲渡にかかる税金の申告について

株式等の譲渡に関して、個人で一定の手続きをすると申告不要となる場合があります。

 

2-1.申告不要のケース

個人の場合の所得税では、銀行や証券会社等金融機関で口座開設の際、「特定口座・源泉徴収あり」を選択することで、この口座での株式等の売却については所得税の申告が不要です。
ただし、金融機関で取引する株式等は上場株式のみのため、非上場株式等の譲渡は特定口座を利用できません。
非上場株式等の譲渡を行った場合は申告が必要なため、注意しましょう。

 

2-2.譲渡損失の繰越控除

上場株式等の売却で損失が発生した場合、損失を最大で3年間繰り越しでき、次年度から3年間の株式譲渡益と相殺して税金の計算を行うことができます。
ただし、譲渡損失の繰り越しや次年度以降の譲渡益との相殺を行うには連続して毎年確定申告をする必要があります。

 

2-3.株式譲渡の損益通算

株式の配当等についても、所得税の対象です。
上場株式の配当等は上場株式の譲渡損と相殺して所得を少なくすることで、かかる税金を下げられます。
上場株式の売却で損失が出ており、かつ上場株式の配当を得ている場合は、確定申告をするほうが税金が少なくなります。
この制度を「損益通算」といいます。
また、複数の口座で株式等の運用をしているのであれば、口座間での損益通算も可能です。
ただし損益通算を行うには、株式等の譲渡について申告するのが条件です。

 

3.株の譲渡に関する税金の特例制度

事業承継のために株式等を譲渡した場合や、株式等を相続した場合に適用できる特例制度があります。
それぞれの特例について解説していきます。

 

3-1.事業承継税制

会社の経営権や資産を継承させるために自社の非上場株式等を後継者に贈与した場合や経営者が亡くなった場合における贈与税や相続税の納税に猶予が与えられる制度を「事業承継税制」といいます。

事業承継税制を活用して納税が猶予された後、事業承継税制の適用要件を満たした状態で引き続きこの制度の適用を受けた非上場株式等を 保有すること等により、納税の猶予が継続され、先代経営者等(贈与者)や事業承継者(受贈者又は相続により株式等を相続した相続人))が死亡した場合等にはその死亡等のあったときにおいて納税が猶予されている贈与税や相続税の全部又は一部についてその納付が免除されます。
ただし、納税猶予期間中に規定の取り消し事由が発生した場合は、猶予されていた税額に利子を加算して納付しなければいけません。

よって、取り消し事由に該当しないかの注意が必要です。

 

3-2.取得費加算の特例

株式等の売却による所得税の計算では、売却によって得た収入金額から、株式等の取得費や譲渡費用を差し引いた差額に対して税金がかかります。

ところで、相続で取得した株式等で、相続等により取得する際に相続税がかかっていた場合、この株式を売却して所得税を計算する際に、課税された相続税額のうち一部を株式等の取得にかかった費用に加算できる制度があり、これを「取得費加算の特例」といいます。
取得費加算の特例を使った場合、株式等の売却による譲渡所得の計算は下記のとおりです。
「株式等売却の収入金額-{(株式等の取得費+相続により株式等を取得するにあたって課税された相続税額のうち、譲渡した株式等に係る部分の相続税額)+譲渡費用}」
取得費加算の特例は上場株式、非上場株式のどちらにも適用できますが、要件として相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに相続した株式を譲渡した場合のみです。

また、生前贈与された株式は対象外のため、注意してください。

 

4.株の譲渡に贈与税がかかる場合の計算は?

ここでは、株式等の譲渡に贈与税がかかる場合と、その場合の計算について解説していきます。

 

4-1.株式等の譲渡に贈与税がかかるケース

個人の方が、個人の方から株式等を無償で受け取った場合は、贈与税がかかります。

また、株式等を有償ですが時価より低い価格で譲渡する場合もあり、これを「低額譲渡」といいますが、時価と譲渡価格の差額部分について個人・法人とも、売主や買主に所得税・法人税が、個人の場合は贈与税がかかる場合もあるため、注意しましょう。

例えば、個人同士で低額譲渡を行った場合に、時価と譲渡価額の差額について買主に贈与税がかかる場合があります。

 

4-2.株式等の評価方法

株式等の贈与に関する贈与税は、受け取った株式等の時価に基づいて計算されます。
上場株式等の場合、価格が市場で公表されているため、時価の把握が容易です。
しかし、非上場株式等の場合は価格が公表されていないため、自身で時価を評価しなければいけません。
非上場株式等を受け取った人が会社の経営支配力を持つ場合は、原則的評価方法を用います。
会社の規模に応じて「類似業種比準方式」「純資産価格方式」、またはその併用で評価します。
経営支配力がない場合は、1年間の配当金を基準に算定する「配当還元方式」が適用されます。

 

4-3.贈与税の計算とかかる税率

贈与税では「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらかの選択が可能です。
暦年課税の計算では、まず1年間に受けた贈与財産の時価合計額を算出します。
贈与税には「基礎控除」というものがあり、財産の合計額から110万円まで控除(以下、「基礎控除」といいます。)して、残額に対し贈与税率をかけて贈与税を算定します。

1年間に贈与によりもらった財産の合計額が基礎控除額110万円以下であれば、贈与税の申告は不要です。

贈与税率は贈与した相手が誰か、また財産額はいくらかによって税率が変わります。

例えば、兄弟間や夫婦間の贈与や、親から子への贈与で子が未成年者の場合は「一般税率」が適用され、下記の税率を適用します。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
参照:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
贈与により財産を取得した人(贈与を受けた年の1月1日において18歳以上)が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した場合は、下記の税率が適用されます。
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
例えば、25歳の方が親から時価480万円の株式を贈与され、ほかに贈与された財産がない場合、贈与税は下記のとおりです。

(480万円-110万円)×15%-10万円=45.5万円

次に相続時精算課税制度の計算では、一年で贈与を受けた金額の合計から基礎控除110万円を控除するまでは同様です。

相続時精算課税制度を適用した方から受けた贈与で、一年間に贈与を受けた額が基礎控除110万円を超える場合において、その超えた額に対して贈与税の課税の対象となりますが、その超えた額について相続時精算課税制度を適用してからの累計が、2,500万円に達するまでは贈与税がかからず、2,500万円を超えた場合、超えた分に関して一律20%の贈与税がかかります。

ただし、この制度を受けた場合は、贈与をした方が他界して相続税を計算する際に、贈与を受けた年における贈与財産の贈与時の価額から基礎控除額を控除した残額について、この制度を適用してから亡くなられるまでの残高の合計額を、その亡くなられた方の 相続財産に加算して計算します。

 

まとめ

株式の譲渡に課せられる税金の種類には法人税・所得税・復興特別所得税・住民税・贈与税・相続税が挙げられます。
所得税と贈与税の申告期限は翌年の3月15日までです。
しかし、相続税の申告期限は被相続人が死亡したことを知った日(通常は被相続人の死亡の日)の翌日から10カ月以内で期限が異なるため、注意しましょう。

また、それぞれの税金について計算方法や適用する税率が異なるほか、税額を少なくできたり、贈与や相続では特例の適用によって納税猶予を受けられたりします。
自身で税額を計算するのに自信がない場合は、税理士や税理士法人に依頼することをおすすめします。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

この記事は専門家による監修を受けて作成されていますが、内容の誤りや不正確性によって、読者が何らかの損害を被る場合でも、当法人はその責任を一切負わないものとします。

俳優・竹中直人さんによるWEB経済番組「発見!課題解決カンパニー」に出演しました。

同じカテゴリの記事

COMPANY
愛知県内の3拠点、知立・岡崎・名古屋から全国に向けて、税務・会計を徹底サポート!