税務情報
2025.01.28
個人が税理士に確定申告を依頼する場合の費用相場は?ケース別に分けて紹介!
自身で事業を営んでいる個人事業主の方はもちろん、副業収入や不動産収入があり確定申告をする方もいるでしょう。
しかし、税理士に確定申告を依頼する場合は、どれくらい費用がかかるのか気になるかもしれません。
そこで本記事では、確定申告を税理士に依頼しようか検討している個人の方へ、費用相場を紹介します。
税理士に依頼したくても断られてしまうケースや原因も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.【ケース別】個人が税理士に依頼した場合の費用相場
個人で税理士に確定申告を依頼した場合は白色申告か青色申告か、どのような収入があるか、
また契約内容などでも費用が変わります。
基本的には、作業時間や手間が多くかかるほど費用が高くなる傾向です。
それぞれの場合の費用相場について、解説していきます。
1-1.白色申告をする個人事業主の場合
確定申告の際は帳簿を作成する必要がありますが、白色申告の場合は複式簿記でなく簡易帳簿の作成でよいため、作業量が少なくなります。
提出書類に関しても確定申告書・収支内訳書・添付書類のみで済むため、青色申告に比べて作業量や時間が少なく料金も抑えられるのが一般的です。
1-2.青色申告をする個人事業主の場合
個人事業主が青色申告を税理士に依頼する場合の費用は、10万円を超えるケースも増えてきます。
白色申告よりも作業の手間がかかる複式簿記での作成が要求されるため、税理士へ依頼する料金は高くなる傾向です。
青色申告は確定申告の際に確定申告書と青色申告決算報告書、添付書類を提出する必要があります。
ただし、青色申告には控除額が異なるいくつかの種類があり、それぞれ求められる帳簿の作成方法や提出書類が異なるため注意しましょう。
10万円の青色申告特別控除は簡易帳簿での記帳が可能で、青色申告決算報告書として損益計算書の提出が求められます。
一方で青色申告の55万円・65万円の青色申告特別控除の場合は複式簿記で記帳をする必要があり、決算報告書として貸借対照表、損益計算書も必要です。
なお、控除額は申告の方法によって異なり、紙媒体で申告した場合は55万円控除、e-Taxを利用した場合は65万円控除が適用されます。
1-3.会社員・サラリーマンの場合
会社員・サラリーマンの場合は、確定申告を依頼する費用は安く済むケースがあります。
会社員・サラリーマンは年末調整で給与に関する税務計算がすでに行われているため、確定申告の際に税理士が作業する手間が減るからです。
基本的に、会社員・サラリーマンは毎月の源泉徴収と年末調整で申告・納税が完了するため、確定申告は不要です。
しかし、一か所給与の方で副業の所得が20万円を超えた場合や1年間の給与が2,000万円を超える方、医療費控除を受ける際などは確定申告をしなければいけません。
なお売上や仕入、そのほかの経費などで取引が多くある場合は、費用が高くなるケースもあるため税理士に相談しましょう。
1-4.不動産からの賃貸収入がある場合
不動産を所有しており、貸付による賃貸収入がある場合も確定申告が必要となるケースがあります。
不動産賃貸収入に関して税理士に依頼する場合は、10万円程度が相場です。
ただし、保有している賃貸物件の数や不動産賃貸収入の金額によって、依頼費用が高くなることがあります。
また、不動産賃貸収入に関して青色申告を選択することも可能ですが、複式簿記で記帳するため、また必要書類の準備に時間と手間がかかるため、依頼費用はさらに増える傾向です。
1-5.顧問契約を結ぶ場合
顧問契約を結ぶ場合の費用相場は月額3万円程度で、確定申告の費用が別途かかります。
月額費用は年間の売上額や毎月の仕訳数でも金額が変わるため、確認しておくとよいでしょう。
個人で経営しており毎月ある程度の取引が生じている場合など毎月記帳が必要となるケースがあります。
記帳代行を依頼していない場合は自身で記帳を行い、税理士がチェックする形式となります。
1-6.記帳代行を依頼する場合
記帳代行は通常、税理士と顧問契約をする際のオプションサービスです。
顧問契約のみの場合と比べて毎月の記帳を税理士が行う分、作業の手間がかかるため費用も高くなります。
事業の取引が多いほど仕訳数は多くなり、金額も上昇するのが一般的です。
また、消費税の課税事業者である場合も、顧問契約を結んで毎月の記帳をすることが多いでしょう。
特に消費税の計上は間違えやすい項目のため、消費税の申告納付義務がある場合は税理士に依頼するのがおすすめです。
2.費用を支払ってでも確定申告を税理士に依頼するメリット
確定申告は自身で行うこともできますが、費用を支払って税理士に依頼するメリットがあります。
税理士に依頼する場合のメリットを、それぞれ解説していきます。
2-1.確定申告にかかる時間と手間を削減できる
例えば帳簿の記帳や元帳の作成、申告書の記載から申告作業なども税理士に代理で任せられます。
特に青色申告で55万円・65万円の青色申告特別控除を受ける場合は記帳を複式簿記で行う必要があり、会計の知識がなければ時間がかかるでしょう。
最近では銀行口座やクレジットカードと連携して、自動で仕訳を行ってくれる会計ソフトもあります。
しかし、複雑な仕訳には対応できない場合があるほか、誤りのある箇所もないとは言い切れないため、正しく記帳されているか自分でチェックしなければいけません。
また、保険料控除やふるさと納税の控除、医療費控除などを受けたい場合は申告書に記載する必要があります。
しかし、モレがなく正確に記載するには税法の知識が求められるため、税理士に依頼したほうが確実です。
2-2.節税効果が期待できる
個人事業主の場合は事業で生じた費用を経費に計上することで、税金額が下がります。
ただし、経費にできない費用を計上していた場合は税務調査が入り、追徴課税として追加の税金がかかるため注意が必要です。
その点、税理士に経費計上を任せることで、適切に対応しながら税金を抑えられます。
また売上が大きくなるほど所得税率が上がるため、税金対策により得られる効果も高くなります。
目安としては売上が1,000万円を超えたあたりが、税金対策の効果を大きく得られるようになるタイミングです。
また、事業規模がある程度大きくなってきた段階で法人化すると、納付する税金が少なくなる可能性があります。
どのタイミングで法人化すればよいかはシミュレーションをする必要があるため、税理士に相談するのがおすすめです。
そのほか、税金額を下げるための提案もしてもらえるため、税理士に依頼することで節税が期待できます。
2-3.さまざまな税務の相談が可能
個人事業主から法人化する場合は、事業にかかる税金が所得税から法人税に切り替わります。
法人税の申告書の書き方は所得税に比べて複雑なため、税理士に依頼することをおすすめします。
法人化した場合は法人の利益に応じて法人税がかかり、法人から自身への給与額に応じて所得税がかかります。
法人税の税率は原則23.2%、所得税は所得の額に応じて税率が5%から45%まで変動します。
法人から自身に、給与をいくら支給すればトータルの税金額を少なく抑えられるかといったことも相談できるため、活用するとよいでしょう。
また、相続を予定している財産の金額が3,000万円を超える場合、相続開始時に相続税の申告をする必要があるか否かの検討をすることとなります。
相続税の申告手続きは煩雑であり、申告の仕方によって税金額が大きく変わる場合もあるため、相続財産がある方も税理士への相談がおすすめです。
3.確定申告の依頼を税理士に断られる人の特徴
確定申告を税理士に依頼しようと決めても、場合によっては断られることがあります。
また契約を結んでも確定申告をした後に、税理士側から契約解除を求められるケースもありえます。
税理士から依頼を断られる人の特徴を解説していくため、そのような事態にならないようチェックしておきましょう。
3-1.無理な節税をお願いする
節税をしたいあまり、以下のような行為をするのは避けましょう。
●売上を意図的に除外する
●架空の経費を計上する
●従業員の給与を不正に多く計上する
上記の行為は明らかな脱税に該当し、本人だけでなく加担した税理士にも重い罰則が科されます。
このように過度な節税を依頼する方は、税理士から契約を断られることが多い人の特徴です。
また、税金がかからないように事業の利益が出ないようにしたり、税金をきちんと払わなかったりすると、融資を受けられなくなるなど事業を行う際に不利になります。
無理な節税は依頼せず、適切に納税を行いましょう。
3-2.必要な資料やデータを出さない
個人事業主の確定申告の期限は、翌年3月15日です。
期限を過ぎると加算税や延滞税などの追加負担が発生するため、税理士は期限内に作業を完了させるよう努めます。
しかし、税理士が依頼した資料やデータを提出せずに先延ばしにされると、申告期限に間に合わなくなる可能性があります。
夜遅くまで作業して間に合わせることもありますが、こうした対応が続くと税理士が疲弊するため、翌年以降の依頼を断るケースも少なくありません。
さらに、申告が間に合わなかった場合に「税理士の責任だ」と主張し、トラブルになるケースもあります。
このような背景から、期限が守れない依頼者は契約を断られることが多くなります。
3-3.報酬を支払わない、もしくは値切る
税理士にも生活があり、税理士事務所や税理士法人には従業員の給与や運営費など、継続的な支出が発生します。
報酬を支払わない、もしくは値切る方であれば業務の維持が困難になり、税理士はお断りせざるを得ません。
仮に1年目は通常より安い報酬で引き受けたとしても、2年目以降は通常の水準で請求することが一般的です。
もし請求に応じてもらえなければ、契約解除に至るケースもあります。
いずれにせよ、報酬を適切に支払わない方は税理士からの信頼を失い、依頼を断られる可能性が高いことを理解しておきましょう。
まとめ
個人の方が税理士に確定申告を依頼することで時間や手間を削減でき、節税効果や所得税以外の税務相談もできるなど、さまざまなメリットがあります。
税理士に依頼する費用は、申告方法や顧問契約の有無、記帳代行も依頼するかなどによって変動します。
大まかな相場観を把握した上で、実際の料金は税理士と相談するのがよいでしょう。
監修者情報
税理士法人スマッシュ経営
杉田 透(すぎた とおる)
資格:税理士
経歴
- 1959年
- 愛知県豊田市生まれ
- 1980年
- 名古屋国税局採用
- 2010年
- 法人税担当統括官
- 2020年
- 名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる