税務情報

2024.12.05

個人事業主は確定申告が必要?やり方や注意点を解説!

個人事業主はその年の所得が一定の金額を超えると、確定申告が必要となります。

しかし、確定申告のやり方が分からずに悩んでいる方も多いでしょう。

そこで本記事では、そもそも確定申告とは何か、個人事業主が行うべき手続きについて解説します。

最後までご覧いただき、個人事業主が行うべき確定申告への不安を解消しましょう。

 

1.個人事業主の確定申告について

まずは確定申告の概要、必要な場合・不要な場合について解説していきます。

1-1.確定申告とは

確定申告とは、その年の1月1日~12月31日までに生じた所得金額と、それに対する所得税額を確定させる手続きのことです。

個人が一定の収入を得た場合は、所得税額を申告・納税しなければいけません。

はじめに1年間の売上から必要経費を差し引き、事業所得を計算します。

続いて、所得控除を差し引いて課税所得を算出し、所得税率をかけて所得税額を求めます。

源泉徴収税や予定納税額がある場合は、確定申告によって過不足が精算されるため、還付金を受け取れるケースもあります。

確定申告の期間は翌年の2月16日~3月15日のため、必ず期間内に行いましょう。

1-2.個人事業主は確定申告が必要?

個人事業主で確定申告が必要かどうかは、人によって異なります。

ここでは、確定申告が必要な場合と不要な場合に分けて、それぞれを解説していきます。

確定申告が必要な場合

個人事業主が確定申告をしなければいけないのは、次に該当する場合です。

  • 事業所得(収入-必要経費)の金額が48万円以上
  • 不動産収入やアルバイトなどの所得が年間20万円を超える

例えば、個人事業主として開業して、1年間の収入が200万円だとしましょう。

仕入や必要経費が120万円の場合は、事業所得の金額は80万円(=200万円-120万円)となります。

そこから、所得控除額である基礎控除額48万円を差し引くと、残高は32万円です。

つまり、課税所得は0円ではないため確定申告をする必要があります。

また、個人事業主でも20万円を超える給与所得などがある人は、確定申告しなければいけません。

確定申告が不要な場合

個人事業主でも確定申告が不要な場合は、以下の通りです。

  • 事業所得(収入-必要経費)の金額が48万円未満
  • 不動産収入やアルバイトなどの所得が年間20万円以下

個人事業主でも、事業所得が基礎控除額の48万円を下回るのであれば、確定申告は必要ありません。

例えば、収入が100万円で必要経費が80万円の場合、事業所得は20万円です。

そこから、基礎控除額48万円を差し引くとマイナスになるため、確定申告は不要となるのです。

 

2.個人事業主が選択できる確定申告は2種類

個人事業主が確定申告をするに当たり「青色申告」「白色申告」の2種類から選択します。

ここでは「青色申告」「白色申告」の違いを解説していきます。

2-1.青色申告

青色申告をすると「青色申告特別控除」と呼ばれる控除制度が受けられ、税制上においてさまざまな特典を利用可能です。

事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出すると、青色申告事業者になることができます。

また、複式簿記で記帳を行うことにより、55万円(e-Taxを利用すれば最大65万円)の控除を受けられます。課税所得が少なくなるため、節税というメリットを享受できます。

また、万が一事業で赤字を計上してしまっても、翌年以降3年間に損失を繰り越し、所得から控除することが可能です。

ただし、記帳や確定申告の準備に手間がかかる点が、青色申告のデメリットです。

複式簿記で記帳したり、貸借対照表や損益計算書といった書類を提出したりする必要があり、作成に時間を要します。

手作業で帳簿や書類を作成するのは複雑なため、会計ソフトなどの使用を検討する必要があるでしょう。

青色申告の場合に必要となる書類は、以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書
  • マイナンバー関連の書類
  • 控除に関する書類
  • 取引先からの支払調書
  • 源泉徴収票

なお、控除に関する書類・取引先からの支払調書・源泉徴収票に関しては、人によって必要かどうか異なるため、併せて確認しておきましょう。

2-2.白色申告

青色申告を選択しない個人事業主は、自動的に白色申告となるため、事前に申請する必要はありません。

白色申告は複式簿記が不要なため、帳簿作成はシンプルであり、事務手続きがスムーズな点がメリットです。

ただし、青色申告のように節税ができない点は、白色申告のデメリットといえます。

最高65万円の特別控除、赤字の翌年以降の繰り越し制度が利用できないため、節税対策を重視したい方は、青色申告を検討すると良いでしょう。

白色申告の場合に必要となる書類は、以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • 収支内訳書
  • 控除に関する書類
  • 源泉徴収票
  • マイナンバー関連の書類

控除に関する書類や源泉徴収票は、必要な場合のみ提出しましょう。

 

3.個人事業主が確定申告する方法

ここからは、個人事業主が確定申告を行う具体的な流れを解説していきます。

3-1.開業届を提出

新たに事業を開始した場合は、まず開業届を提出しましょう。

ただし、開業届は事業を開始した日から1カ月以内に提出する必要があります。

青色申告を希望する場合は、併せて「青色申告承認申請書」も提出しましょう。

青色申告承認申請書の提出期限は、確定申告をする年の3月15日まで(1月16日以後に事業を開始した場合は2カ月以内)です。

開業届とは期限が異なるため、提出を忘れないように注意しましょう。

3-2.必要書類を準備

確定申告を行う際は、必要書類を事前に準備しておくことが大切です。

青色申告の場合は青色申告決算書を、白色申告の場合は収支内訳書を用意します。

加えて、所得控除を受けるためには、社会保険料や生命保険料、医療費の控除証明書などもそろえておきましょう。

また、青色申告・白色申告に関わらず、日頃から記帳することも重要です。

1月1日~12月31日までの売上(収入)や仕入、経費を漏れなく集計して確定申告書を作成するために、取引の請求書や領収証も保管が求められます。

手続きをスムーズに行うためには、必要書類を事前に用意しておくことがポイントです。

3-3.確定申告書を作成

資料の準備が完了したら、確定申告書を作成しますが、主に以下の4つの方法があります。

  • 国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成する
  • 有料の確定申告作成ソフトで作成する
  • 紙の確定申告書に手書きで作成する
  • 税理士などの専門家に依頼する

ご自身に合った方法で確定申告書を作成し、期限内に提出しましょう。

なお、2021年の税制改正により、確定申告書などの税務書類には押印が不要となったため、印鑑なしで提出が可能です。

確定申告書への印鑑押印が不要になった理由はこちら

3-4.確定申告書の提出

確定申告書を含めた必要書類は、税務署へ提出しますが、方法は以下の5種類あります。

  • 税務署に持参
  • 税務署に設置の時間外収集箱に投函
  • e-Taxで電子送信
  • 郵送
  • 税理士による代理送信

郵送の場合は、消印の日付が提出日とみなされます。

また、電子申告は本人確認書類の提示または写しの添付は不要で、自宅や事務所からでも送信が可能です。

 

4.個人事業主が確定申告する際の注意事項

ここからは、個人事業主が確定申告を行う際の注意点を解説していきます。

4-1.確定申告を行わなかった場合はペナルティが課せられる

確定申告を行う義務のある人が申告を怠ると、ペナルティが課せられてしまいます。

確定申告を行わなかった場合は「無申告」、期限後に提出した場合は「期限後申告」として、無申告加算税や延滞税が課せられる可能性があるのです。

その際、無申告加算税として最大で20%、延滞税は最大で14.6%が加算されるため注意しましょう。

また、青色申告特別控除は55万円および65万円と紹介しましたが、期限内の申告が要件です。

期限に間に合わなかった場合、控除額は10万円に減額されるため、確定申告が必要な方は必ず期限内に手続きしましょう。

4-2.所得が48万円以下でも住民税の申告は必要となる

所得が48万円以下の個人事業主は確定申告が不要だと先述しましたが、住民税の申告は必要なため気を付けましょう。

住民税は、所得税の確定申告をした情報をもとに算出されているため、提出した方は改めて申告する必要はありません。

しかし、確定申告をしない場合は住民税を計算する情報がないため、市町村への申告が求められます。

また、青色申告を選択しており、青色申告特別控除の適用や赤字の繰り越しなどがある方は、確定申告が必要です。

4-3.経費にできるものを把握する

個人事業主が所得税を計算する際は、売上から経費を差し引いて算出するため、経費として計上できるものを把握することが重要です。

収入を得るために必要な費用は「必要経費」として計上され、所得税の負担を軽減できるためです。

例えば、仕入代金や消耗品費、自宅をオフィスとして使用している場合の家賃・水道光熱費・通信費なども、経費として計上できる場合があります。

なお、業務と私生活に関わる費用は、業務に直接関係する部分のみ経費として計上が可能ですが、居住スペースと事業スペースの面積比など、合理的な基準を設けて按分計算する必要があります。

そのため、経費にできるものを事前に把握しておきましょう。

4-4.領収書がない場合は代わりを用意する

経費の証明として領収書を保存する必要がありますが、紛失した場合は代替となる資料を用意しなければなりません。

領収書がなければ、経費としての証明が不十分であるためです。

例えば、取引に関わる納品書や請求書、銀行の振込明細は、支出日や金額などが確認できるため、領収書の代わりとして問題ありません。

また、出金伝票を起票して保管することも可能ですが、税務調査で必ず認められるわけではないため、やむを得ない場合のみ利用してください。

ただし、これらの方法はあくまでも領収書を紛失した場合の代替品です。必可能な限り、領収書を保存するのが望ましいでしょう。

 

5.消費税の個人事業主の確定申告が必要な個人事業主も!

個人事業主の中には、所得税の確定申告と同時に、消費税の確定申告を行う方も多いでしょう。

ここでは、消費税の確定申告について解説していきます。

5-1.個人事業主の消費税申告とは

消費税申告は、その年の1年間の消費税額を翌年3月31日までに申告する必要があります。

消費税の確定申告の要否は原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判断します。

基準期間とは、個人事業主の場合、その年から2年前の1月1日~12月31日までの1年間のことです。

たとえ課税売上高が1,000万円を超えていても、2年前の課税売上高が1,000万円以下の場合は、免税事業者となります。

消費税の確定申告書は、所得税の確定申告の提出期限より約半月後に提出期限が定められているため、提出し忘れないように注意しましょう。

5-2.個人事業主とインボイスについて

適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録した場合は、以前まで免税事業者であっても、消費税申告が義務付けられるようになりました。

したがって、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税の確定申告が必要です。

また、インボイス制度では、領収書や請求書に記載する内容も厳格に規定されているため、インボイス制度の要件を満たした領収書や請求書を保管しておきましょう。

まとめ

本記事では、個人事業主の確定申告について解説しました。

個人事業主で1年間の所得が48万円を超える場合は、確定申告をしなければなりません。

もし、確定申告が必要であるにも関わらず、申告が遅れたり、忘れていたりする場合は、ペナルティが課せられる恐れがあるため注意が必要です。

また、確定申告には「青色申告」「白色申告」があり、それぞれでメリット・デメリットが異なります。

個人事業主の方は、ご自身に合った方法で確定申告を行いましょう。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

この記事は専門家による監修を受けて作成されていますが、内容の誤りや不正確性によって、読者が何らかの損害を被る場合でも、当法人はその責任を一切負わないものとします。

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