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2024.10.02

M&Aにかかる手数料の相場は?料金の内訳についても詳しく解説

事業のさらなる成長や後継者不足の問題解決に向けて、M&Aを検討する企業経営者も多いでしょう。M&Aは企業の合併や買収を意味する言葉で、一般的には経営権を取得・譲渡するための取引を指します。

M&Aを進めるにあたっては専門的な知識を要するため、M&A仲介会社をはじめとした専門家に仲介業務を依頼するのが基本です。しかし、専門家にM&Aのサポートを依頼した際は手数料が必要となることも覚えておきましょう。

そこで今回は、M&Aの手数料の相場を項目ごとに紹介したのち、手数料は誰が支払うのか・M&Aの完全成功報酬制とは何かについても詳しく解説します。M&Aを検討している企業経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

1.M&Aの手数料の相場は?

M&Aを進めるにあたって、仲介会社や税理士、弁護士といった高度な知識を有する専門家に仲介業務のサポートを依頼する場合は、手数料が必要となります。

各種手数料の相場を知らずに交渉を進めると、利益が大きく損なわれる可能性もあるでしょう。そのため、M&A専門家にサポートを依頼するにあたっては、手数料をあらかじめ把握しておくことが大切です。

そこでまずは、M&Aの手数料の相場を項目別に詳しく紹介します。

 

1-1.相談料

相談料とは、M&Aに関する相談を専門家に行ったときに発生する費用です。ほとんどの専門家は相談料を無料に設定していますが、専門家によっては1回1万円程度の相談料が発生する場合もあります。

また、初回相談は無料となっているものの、2回目以降は相談1回ごとに料金が発生するケースや、「1時間ごとに5,000円」など時間制料金を設定しているケースもあります。トラブルを避けるためにも、あらかじめ相談料の取り決めについて確認しておきましょう。

 

1-2.着手金

着手金とは、M&A専門家に仲介業務のサポートを正式に依頼したときに発生する費用です。着手金を無料に設定している専門家もいますが、基本的には最低でも50万円程度の着手金が発生します。相場は50万~300万円と幅があり、案件規模によって大きく異なることも特徴です。

また、着手金はM&Aが成立せずに終わった場合でも返金されません。手元資金がない場合は着手金無料の専門家に依頼するのも一案ですが、サービスの質を重視するならサービスの質とコストのバランスを判断して専門家を選ぶことがおすすめです。

 

1-3.月額報酬

月額報酬とは、専門家との契約期間中に毎月発生する手数料のことです。士業との顧問契約によって発生する月額顧問料のような費用で、「リテイナーフィー」と呼ばれることもあります。

M&A仲介会社の場合、依頼内容やその難易度によって、金額は大きく変動します。

なお、月額報酬も着手金と同様、M&Aが成立したかどうかに関係なく返金はされません。

 

1-4.中間報酬

中間報酬とは、M&Aの取引先が決定し、ある程度のプロセスまで交渉が進行したときに発生する費用です。一般的には、基本合意書の締結後が中間報酬の支払いタイミングとなります。

相場的には、中間報酬を「成功報酬の10~20%」と設定しているところが多い傾向です。しかし、中間報酬は専門家へのインセンティブとしての意味合いが強く、依頼者にとっては経済合理性が薄い手数料でもあることから、中小企業向けの専門家では無料と設定するケースも増えています。

なお、基本合意書を締結し中間報酬を支払った後にM&Aが不成立となっても、支払った中間報酬は返金されない点に注意しておきましょう。

 

1-5.デューデリジェンス費

デューデリジェンス費とは、M&Aの買い手が最終的な買収判断に向けて「デューデリジェンス(買収監査)」を行うときに発生する費用です。デューデリジェンスには業界知識を含む豊富な専門知識が必要であり、税理士や弁護士、公認会計士といった専門家に依頼するのが基本となっています。

また、デューデリジェンスは調査対象によって「財務・法務・税務デューデリジェンス」や「ビジネスデューデリジェンス」などいくつかの種類に分けられており、実施する種類や案件規模に応じてデューデリジェンス費が変動します。例として、中小企業を対象に財務・法務・税務デューデリジェンスを行った場合は約200万~300万円が相場です。

 

1-6.成功報酬

成功報酬とは、M&Aにおける最終契約の締結後に支払う費用のことです。成功報酬額は、基本的にM&Aの取引金額をもとにした「レーマン方式」という方法で算出されます。

レーマン方式とは、買収金額に報酬率をかけて手数料額を算定する計算方法であり、買収金額が大きいほど手数料率が下がる仕組みとなっています。レーマン方式における基準額ごとの一般的な報酬率は、下記の通りです。

基準額 報酬率
5億円までの部分 5%
5億~10億円までの部分 4%
10億~50億円までの部分 3%
50億~100億円までの部分 2%
100億円を超える部分 1%

例えばM&Aによる買収金額が3億円だった場合、成功報酬額は「3億円×5%」で「1,500万円」となります。

 

2.M&Aの手数料は誰が支払う?

専門家による仲介業務のサポートを受けながらM&Aを進める際、特に気になるポイントが「手数料は誰が支払うのか」という点です。

そもそもM&Aの手数料の支払い方法には、「両手取引」と「片手取引」の2つがあります。どちらの支払い方法を選ぶかによって、手数料を支払う人や手数料の負担割合が変わります。

ここからは、両手取引と片手取引における手数料の取り扱いについて詳しく解説します。

 

2-1.両手取引の場合

両手取引とは、専門家が買い手と売り手双方にサポートを提供する形式です。両手取引の場合、専門家は双方と関わりながら交渉を進めるため、手数料は買い手企業と売り手企業いずれも支払う必要があります。

また、両手取引は透明性が高く、利害関係の調整や譲渡金額・契約条件の交渉などもスムーズに進みやすくなる一方で、機密情報が漏洩するリスクもゼロではありません。

 

2-2.片手取引の場合

片手取引とは、買い手または売り手の片方のみが専門家によるサポートを受ける形式です。両手取引では、専門家が双方と関わりながら交渉を進めるため買い手と売り手それぞれが手数料負担を分担できる一方で、片手取引はいずれか一方のみをサポートするため、手数料の負担率は両手取引に比べて単純に倍増します。

しかし、片手取引の場合は専属サポートとなり要望を聞いてもらいやすいほか、両手取引で懸念されるような情報漏洩リスクを回避できる点がメリットです。

 

3.M&Aの完全成功報酬制とは?

M&Aの手数料の料金システムとして、各種手数料を別途請求する仲介会社もいれば、着手金や中間報酬などは設定せずに「完全成功報酬制」をとっている仲介会社も存在します。

完全成功報酬制であれば、交渉中に何らかの手数料が発生することがありません。成立する確証のないM&Aに対して手数料を支払わずに済むという点は、大きなメリットです。また、支払う手数料は成功報酬のみというシンプルかつ簡単な料金体系となっているため、M&A実施後の計画も立てやすくなります。

しかしその一方で、着手が円滑に進まない可能性がある点がネックです。特に成約の望みが薄い案件においては、対応を後回しにされるケースも少なからずあります。

このように、完全成功報酬制にはメリットとデメリットの両面があるため、慎重に比較・検討した上で自社に適した仲介会社を選ぶことが大切です。

 

まとめ

M&Aの仲介業務を専門家に依頼する場合は、交渉プロセスごとに相談料・着手金・月額報酬・中間報酬・デューデリジェンス費・成功報酬の各種手数料が必要となります。合計手数料の相場は案件の規模によっても大きく異なりますが、最低でも500万円以上は見ておくとよいでしょう。

また、M&A仲介会社によっては完全成功報酬制をとっている場合もあります。完全成功報酬制の場合、支払う手数料は成功報酬のみとなる一方で、着手がスムーズに進まない可能性もあります。コスト面だけに着目せず、サービスの質なども十分に把握した上で、安心して依頼できる仲介会社を選択することが大切です。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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