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2024.07.26

M&Aアドバイザーには何を任せられる?依頼のメリットも解説

M&Aアドバイザーとは、M&A(企業の合併・買収)を検討している企業に対して、専門的な知識や経験を生かして、さまざまなアドバイスやサポートを提供する専門家のことです。M&AアドバイザーはM&Aの戦略立案から始まり、M&A候補先の選定、デューデリジェンス、バリュエーション、交渉、契約締結、PMIまで、M&Aを総合的に支援します。

当記事では、M&Aアドバイザーとは何かといった基礎的な内容から、M&Aアドバイザーに依頼するメリットまで詳しく解説します。

 

1. M&Aアドバイザーとは?

M&Aアドバイザーとは、企業の合併・買収(M&A)の際に助言やサポートを行う専門家のことです。M&Aアドバイザーは、財務、税務、法律などの幅広い知識を活用して、M&Aがスムーズに進行するよう助言し、交渉を支援します。

似た用語に「M&Aアドバイザリー」があります。M&Aアドバイザリーは大企業向けのM&Aを担当する、証券会社や投資銀行を指すケースが多いです。ただ、M&AアドバイザーとM&Aアドバイザリーは、同義で使われるケースもあります。

M&Aアドバイザーの関わり方としては、「アドバイザリー形式」と「仲介形式」の2つの形式があります。アドバイザリー形式は、売り手と買い手の双方にそれぞれアドバイザーがつき、それぞれの立場から助言を行う形式です。一方、仲介形式では、1人のアドバイザーが中立的な立場から売り手と買い手の間に立ち、両者の間の媒介として機能します。

 

2. M&Aアドバイザーに任せられる業務

M&Aアドバイザーにはどのような仕事を任せられるのか、支援してもらえる内容について詳しく解説します。

ただし、任せられる仕事の範囲・内容はM&Aアドバイザーによっても異なります。より詳しい情報については、依頼するM&Aアドバイザーに確認してみてください。

 

2-1. M&Aのマッチング支援

まずはクライアントの希望条件や戦略に基づいて、独自のネットワークやデータベースを活用しながら、多数の企業からマッチするM&A候補を選定します。

具体的には、初期段階で30社程度を記載した「ロングリスト」を作成し、企業の基本情報をまとめます。その後、より詳細な分析を行い、数社に絞り込んだ「ショートリスト」を作成するのが一般的です。

ショートリストから選ばれた企業に対しては、M&Aアドバイザーが優先順位を設定し、選定された企業への交渉の打診を行います。この打診が成功すれば、両者間で秘密保持契約を結び、具体的な交渉がスタートします。

また、中小企業では「ロングリスト」を作成せず、インターネットで募集する方法など多義にわたる手法が用いられています。

 

2-2. 資料作成

M&A取引においては、売り手企業に関する情報を整理し、潜在的な買い手に提示するための資料を作成します。具体的には「ノンネームシート」と「企業概要書」の2つの資料が一般的です。

ノンネームシート 企業を特定しない形で基本的な事業内容や売却理由などの情報を提供する資料です。初期の段階で買い手候補に配布されます。
企業概要書 会社の具体的な名前や所在地、詳細な財務状況や業務内容を含む、より詳細な情報を含む文書です。企業の強みと弱み、業界内での位置付け、将来の成長見込みなども記載されています。秘密保持契約の締結後に、交渉を進める買い手に提供されます。

 

2-3. バリュエーション

M&Aにおける重要な工程の1つに、「バリュエーション」があります。M&A対象企業の価値を評価するプロセスであり、M&A価格を決定する上で非常に重要です。

M&Aにおけるバリュエーションのアプローチ方法としては、主に以下の方法があります。

インカムアプローチ 将来の利益やキャッシュフローに基づいて企業価値を評価する方法です。将来の収益を現在価値に割り引いて算出します。代表的な手法として、DCF法(Discounted Cash Flow method)があります。
コストアプローチ 企業の貸借対照表の資産と負債を時価評価し、純資産から企業価値を算出する方法です。
マーケットアプローチ 類似企業の株価やM&A事例などを参考に、企業価値を算出する方法です。

M&Aアドバイザーは、上記のような手法を用いて、対象企業の価値を客観的に評価します。これにより、買い手企業は適切な買収価格を提示でき、売り手企業は自社の価値を最大限に評価してもらうことができます。

 

2-4. デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買収対象企業の価値やリスクを詳細に調査・評価することです。M&A後のトラブルを未然に防ぐために重要なプロセスです。M&Aアドバイザーは、以下のように、財務・法務・事業・人事など、さまざまな分野の専門家と連携し、デューデリジェンスを総合的に実施します。

財務デューデリジェンス 対象企業の財務状況や収益性などを詳細に分析し、隠れた負債やリスクがないかを確認します。
法務デューデリジェンス 契約書や許認可などを調査し、法的な問題がないかを確認します。
事業デューデリジェンス 対象企業の事業内容や市場環境などを分析し、将来の成長性や競争力を評価します。
人事デューデリジェンス 従業員の雇用状況や労務問題などを調査し、M&A後の組織統合における課題を洗い出します。

M&Aアドバイザーは、これらのデューデリジェンスの結果を基に、対象企業の価値を総合的に評価し、M&Aの交渉や契約締結をサポートします。

 

2-5. 交渉サポート

交渉サポートとは、買収価格や取引条件など、M&A契約に関する重要事項について、M&Aアドバイザーが、双方の希望をすり合わせることです。M&Aアドバイザーと業務委託契約を結ぶと、クライアントは交渉のプロセスをM&Aアドバイザーに委ねられます。

M&Aアドバイザーはデューデリジェンスの結果やバリュエーションなどを基に、適正な買収価格の根拠を示し、説得力のある交渉材料を用意してくれます。また、価格以外にも株式対価の割合、経営陣の身分保証、特殊な契約条件など、さまざまな論点について双方のニーズを話し合い、建設的な解決策を導き出すサポートを行います。

さらに、交渉過程には「トップ面談」が含まれることが一般的です。トップ面談とは、売り手と買い手の経営トップが直接会い、M&A後の方針や企業文化などについて話し合う場であり、面談を通して互いの信頼関係を築きます。トップ面談の際、M&Aアドバイザーからコツを聞いておくと、相手の人物像を見極められたり、信頼関係を築きやすくなったりするでしょう。

 

3. M&Aアドバイザーに依頼するメリット

M&Aアドバイザーに依頼することで、M&Aプロセスをスムーズに進め、成功確率を高められます。具体的には、以下の3つのメリットが挙げられます。

  • M&Aがスムーズに進む
    M&Aアドバイザーは、M&Aに関する豊富な知識と経験から、複雑なプロセス全体を管理・サポートします。スケジュールの策定、書類作成、交渉、デューデリジェンス、契約締結、PMI(買収後の統合プロセス)など、各段階で専門的なアドバイスを提供し、M&Aを円滑に進めることが可能です。
  • 自社に合った戦略や相手を選べる
    M&Aアドバイザーは、自社の経営状況やM&Aの目的を理解した上で、最適なM&A戦略を提案します。また、独自のネットワークやデータベースを活用し、自社の条件に合ったM&A相手を効率的に探し出すことが可能です。
  • リスクを回避できる
    M&Aには、法務・税務・会計・人事など、さまざまなリスクが潜んでいます。M&Aアドバイザーはこれらのリスクを事前に洗い出し、適切な対策を講じてM&A後のトラブルを未然に防ぎます。

ただし、M&Aアドバイザーに依頼する場合、費用が発生することに注意が必要です。依頼先を複数検討し、話を聞きながら、慎重に選択するようにしましょう。

 

まとめ

M&Aに関する専門知識や豊富な経験を持つM&AアドバイザーがM&Aのプロセス全体をサポートすることで、M&Aの成功確率を高められます。

M&Aアドバイザーは、金融機関、法律事務所、会計事務所など、さまざまな分野の専門家とのネットワークを有しています。そのため、M&Aに必要な情報を収集したり、専門家の協力を得たりすることができるのが強みです。

M&Aを検討している場合は、M&Aアドバイザーの他、税理士や公認会計士・銀行など身近な存在に相談するのもおすすめです。適切なアドバイスを受けながら、M&Aを成功させましょう。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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