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2024.06.03

資金繰りを改善するための対策6選|資金繰りで発生しやすい課題も解説

企業経営において、売上や利益の管理と同様に重要なのが資金繰りです。資金繰りがうまくいかないと、たとえ利益が出ていても黒字倒産のリスクがあります。

この記事では、資金繰りに悩む主な原因と、それを解決するための具体的な方法を詳しく解説します。赤字が続いている場合や売掛金の回収が遅れている場合の対策、資金繰り表の作成方法などを知りたい方は、ぜひ当記事を参考にしてください。

 

1. 資金繰りで生じやすい悩みは?

企業経営では、売上や利益だけでなく、資金繰りの管理も重要なポイントです。資金繰りに失敗すると、利益が出ていても倒産する黒字倒産につながりかねません。一般的には、以下のような理由で、資金繰りに悩むケースが多いとされています。

  • 赤字が続いている
    赤字とは、企業の支出が収入を上回っている状態のことです。一時的な赤字は必ずしも資金繰りには影響しませんが、長期的に赤字が続いている場合は注意が必要です。銀行から融資を受けている限りは経営を続けられるものの、融資が止まると倒産のリスクが高まります。
  • 売掛金の回収が遅れている
    十分な売上が出ていても、売掛金の回収が遅れていると資金が手元に入りません。売掛金の回収は取引先の資金状況や支払いのタイミングによっても変わるため、適切に管理することが大切です。
  • 売上の急激な増減が起こった
    売上の減少は赤字の要因ですが、急激に増加した場合も、資金繰りの悪化につながります。売上が急増すると、それに伴って仕入れや外注費がかかります。入金よりも支払い期限が早いと、一時的に資金が不足してしまうため、金融機関から資金を調達するなど対策が必要です。
  • 資金繰りの管理ができていない
    資金繰りの管理ができていないことにより、経営が悪化するケースもあります。利益に見合わない株主配当や役員報酬は資金繰りに影響します。資金の不正利用などが起きないよう、会社の内部統制を強化することも重要です。

 

2. 資金繰りを改善する方法

資金繰りを改善するには、資金繰りが悪化している原因を明確にした上で、適切な手段を講じることが大切です。ここでは、具体的な経営改善手段として、6つの方法を紹介します。

 

2-1. 資金繰り表の作成

資金繰り表とは、事業における現金・預金の収支をまとめた表のことです。キャッシュフロー計算書と混同しがちですが、キャッシュフロー計算書は過去の実績を確認するため、資金繰り表は将来を予測する目的で作成します。また、資金繰り表には、資金の使用用途も記入します。

資金繰り表を作成すると、現金が不足するタイミングが予測できるため、黒字倒産のリスクを減らすことが可能です。また、金融機関に融資を依頼する際も、資金繰り表を使って説明すれば相談がスムーズに進むでしょう。現状の問題点を把握し、今後の戦略を考えるときにも、資金繰り表の作成が役立ちます。

資金繰り表の作り方を解説|必要性や効果的な活用方法も

 

2-2. 利益の確保・経費削減

収支のバランスを整える際に、利益・経費の見直しは必須です。消耗品費などは、一つひとつの金額が少なくても、積み重ねによって資金繰りの負担になりかねません。毎月の使用量に対して、購入量が多すぎないか見直すとよいでしょう。

人件費は企業にとって欠かせない経費ですが、費用に見合う売上があるかを確認することは重要です。人件費には旅費交通費や福利厚生費など、従業員の給与・賞与以外の項目も含まれています。すべてまとめると大きな金額になるため、資金繰り改善の際は必ず確認します。

 

2-3. 在庫の整理

過剰に在庫を抱え込んでいることも、資金繰りが悪化する要因です。在庫には保管費用や管理費用がかかるため、不良在庫はセール品として販売するか、処分を検討しましょう。在庫管理表をつけることや、社内で在庫管理のルールを定めることも大切です。

開業当初や会社の売上が増えていくタイミングでは、在庫の数も増えていきます。在庫が増えても損益計算書には直接影響しませんが、現金化されるまでに時間がかかる点には注意が必要です。

 

2-4. 借入金の金利・返済方法の交渉

資金繰りが悪化しているときは、借入金の金利・返済方法の交渉を検討しましょう。返済期限を遅らせることで、資金繰りが大きく改善する可能性があります。

ただし、金融機関に返済条件の交渉をする際は、経営改善計画が必須です。リストラを含む大幅な改善策が求められるケースも少なくありません。また、返済を遅らせている期間に限っては倒産を回避できますが、期限内に経営改善が見られない場合、新規融資は受けられません。銀行が法的な回収措置を取り、一気に倒産に追い込まれることもあるため、注意が必要です。

 

2-5. 得意先の与信管理

得意先から回収する代金についても、適切な管理が必要です。与信管理ができていないと、貸し倒れ(焦げ付き)が発生するリスクが高まり、最悪の場合、連鎖倒産が起こります。貸し倒れにより、対外的な信用が下がってしまう可能性も否めません。

取引先の選定は慎重に行い、事前に与信調査も行いましょう。その後、調査に基づき与信限度額を設定します。与信限度額とは、取引先ごとに定める総債権の上限額です。資金の回収状況について、滞りがないか適宜確認することも大切です。

 

2-6. 資金調達

資金繰りでは、常に手元資金・預金が支払い予定金額を上回る状態にしておくことが求められます。手元資金・預金が足りない場合は、資金調達を考えましょう。

資金調達の方法には、さまざまな種類があります。最も一般的なのは銀行融資です。銀行は金利が比較的安く、大きな金額を借入れできますが、審査が厳しい点には注意が必要です。

政府系の公的融資は、中小企業の経営者や個人事業主でも比較的借りやすいのが特徴です。資金繰りが悪化している場合は、日本政策金融公庫の融資制度である「経営環境変化対応資金」や「企業再建資金」を利用できます。国や自治体の助成金や補助金制度も、資金調達手段の1つです。

債権を買い取ってもらう方法としては「ファクタリング」という専門の買い取りサービスや、少数に社債を発行する「少人数私募債」などがあります。

また、株式を発行することによっても資金を調達できます。株式は社債と異なり返済義務がありませんが、会社経営に大きく影響するため、慎重に検討しましょう。その他に投資家から資金調達する方法としては、クラウドファンディングや、ベンチャーキャピタルの活用などがあります。

不動産や有価証券など、自社の資産を売却するのも有効な手段です。資金不足に悩んでいるときは、業務に直接関係しない資産を見直すタイミングでもあります。

 

3. 資金繰りを改善したいときはプロに相談を

資金繰りの改善は、自社内だけで解決することは困難です。専門知識を有するプロに相談しながら、着実に経営改善を進めていきましょう。

資金繰りを相談できる公的機関としては、中小企業基盤整備機構、よろず支援拠点、都道府県等中小企業支援センターなどが挙げられます。また、商工会議所や商工会、市区町村役場の商工課に相談する方法もあります。これらの機関は気軽に相談しやすいのが特徴ですが、一方で根本的な経営改善までのサポートを受けるのは難しいのが欠点です。

資金繰り相談の窓口として、税理士に依頼する方法もあります。税理士は、お金や税金に関する専門家です。資金繰りや経営改善のノウハウがある税理士に相談すれば、根本的な財務の見直しができるでしょう。

 

まとめ

資金繰りの問題は多くの企業が直面する課題ですが、資金繰り表の作成や在庫管理などを正しく行うことで、改善が可能です。資金繰りに困ったときは、返済方法の相談や資金調達を行いましょう。

また、資金繰りの改善が難しい場合は、専門家に相談するのも1つの手段です。特に、信頼できる税理士へ資金繰りについて相談すれば、税務分野の根本的な見直しも可能です。資金繰りについて悩みがある場合は、一度税理士に相談してみましょう。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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