経営情報

2023.12.25

経営計画書の書き方は?事業計画書との違いや作成のメリットも解説

資金調達を行う際や、社員に企業のビジョンを共有する際に必要となるのが経営計画書です。経営計画書には、経営理念や基本方針・経営目標などを明確に分かりやすく記載する必要があります。

当記事では、経営計画書の書き方を各項目別に解説するとともに、経営計画書の必要性や作成のメリットも解説します。会社のさらなる発展を目指すために、経営計画書の作成を通じて会社の目指すべき姿を示しましょう。

 

1.経営計画書とは?

経営計画書とは、「将来的に会社がどうあるべきか」を経営戦略や行動方針などとともに明示したものです。活用場面として、社員や取引先、出資者、金融機関など、社内外の人間に具体的な会社の未来像や戦略を示す場合などが挙げられます。

経営計画書には長期・中期・短期の3種類があり、そのうちもっとも一般的なのは中期経営計画書です。それぞれの違いをまとめると、以下のようになります。

・長期経営計画書

長期的な会社の経営ビジョンや将来的にあるべき姿・目標を明らかにしたものです。通常、5~10年程度のロングスパンの計画を立てます。ただし、10年後の経営環境を予測することは困難なため、あまり細かな数値目標は設定しません。

・中期経営計画書

長期経営計画書で定めた経営ビジョンやあるべき姿を達成するために、3~5年後の目標を定めた計画書です。売上額やコストなどの具体的な数値も示します。

・短期経営計画書

中期経営計画書の内容に基づき、計画を1年単位に落とし込んで策定した計画書です。事業所別や部門別、社員別など細かく数値目標を設定します。

 

1-1.事業計画書との違い

経営計画書と事業計画書は同じもののように扱われることがありますが、両者は異なります。

経営計画書は「会社の目指すべき姿」「将来のあるべき姿」を明確にする計画書です。会社が手掛けるすべての事業もふくめ、将来的な会社の全体像を示します。事業計画書は、経営計画書で明確にした目標を達成するために作成する、具体的なプロジェクトの実行計画書です。行動計画のほか、事業にかかわるキャッシュフロー計算書や損益計算書、貸借対照表といった詳細な数値計画も含みます。

 

1-2.経営計画書の必要性

経営計画書作成の主な目的は、社内外の人間に具体的な会社経営のビジョン・計画を示すことです。

会社が成長するためには、社員が同じ方向を向いて業務に取り組むことが欠かせません。社員のベクトルがバラバラでは作業効率が悪く、良好なパフォーマンスが発揮されないためです。経営計画書を作成して目標を明示すれば、社員は行動指針や目指すべき方向性が理解でき、求められる行動ができるようになります。

金融機関から融資を受けたいときにも、経営計画書が必要です。ビジョンや事業の計画を示す資料があれば、融資担当者は会社の状況が分かり、融資してもよいかどうかの判断がしやすくなります。

 

1-3.経営計画書を作成するメリット

経営計画書の作成には、さまざまなメリットがあります。特に以下の3点が大きなメリットです。

・目標の共有ができる

経営計画書があることで、経営陣と社員が会社の目標をすんなり共有できます。目標をはっきりさせればやるべきことが判断しやすくなり、社員たちのモチベーションアップにもつながるでしょう。目標達成に向かって社員がぶれずに協働すれば、生産性や業務効率の向上も期待できます。

・現状を把握できる

経営計画を立てるためには、マーケットの動向や自社の立ち位置、事業プランの策定、必要な資金などを精査することが必要です。自社を取り巻く現状が把握でき、マーケットにおける自社の強みや課題も見つけやすくなります。経営戦略を考える上で大切な情報です。

・資金調達に役立つ

堅実な経営計画書があれば、精度の高い資金計画が立てやすくなります。金融機関や出資者から信頼を得やすく、融資も受けやすくなるでしょう。

 

2.【項目別】経営計画書の書き方は?

経営計画書の作成にあたっては、具体的かつ一貫性のある内容にすることが重要です。たとえば、売上を2倍にするという目標を示しているのに具体的な数値目標が低ければ、信頼は得られないでしょう。また、金融機関の関係者など社外の人間も目にするため、高度な専門用語を多用せず分かりやすく書くことも大切です。

ここでは、経営計画書に記載すべき項目やそれぞれの書き方について解説します。

 

2-1.経営理念

経営理念とは、経営者の信念や心情、価値観に基づき、会社の経営方針を示したものです。会社の最終的な目標は、経営理念を実現することにあると言えます。経営理念をはっきりと示せば、社員は自社の存在意義や果たすべき使命、方向性が理解できるようになります。

経営計画書に記載する際は、スローガン形式でも箇条書きでも、好きなスタイルで構いません。ただし、誰が見ても分かりやすいものにすることが大切です。立派に見えるからと難解な言い回しなどを用いても社内外に浸透しづらいので、端的にまとめるよう注意しましょう。

 

2-2.基本方針

会社として経営理念を実現するための基本的な考え方や姿勢を示したものが、基本方針です。基本方針を明確にすることで、会社は経営戦略を打ち出せ、社員は迷わず仕事に取りかかれるようになります。

基本方針は、突き詰めれば経営理念の実現が可能になる内容であることが大切です。作成にあたっては、以下の4つの視点から考えるとよいでしょう。

  • 商品・サービスに対する姿勢や考え方
  • お客様に対する姿勢や考え方
  • 社員に対する姿勢や考え方
  • 地域に対する姿勢や考え方

経営計画書にも、上記4つの視点でまとめた基本方針を記載すれば分かりやすくなります。

 

2-3.経営目標

経営目標とは、会社を経営するにあたっての目標です。利益目標や組織目標、人事目標、社会貢献目標などがあります。収益目標であれば「20××年までに売上高○○億円を目指す」、人事目標であれば「来年度は新卒を〇〇人採用する」などが挙げられます。

達成したかどうか明確に判断できるように、数字で表せて測定可能な内容にすることが大切です。また、高すぎる目標はかえって社員の意欲をそぎかねません。努力次第で達成できる可能性がある目標を設定しましょう。

なお、経営目標は経営理念と混同されることがありますが、両者は別物です。経営理念は会社が目指すべき姿を表したものであり、経営目標は経営上の具体的な目標を示したものです。

 

2-4.現状分析

現状分析を行い、自社が置かれている状況を知って経営課題を明らかにすることも大切です。状況を正確に把握すれば、経営理念の実現や経営目標の達成のために何をすべきかが分かるようになります。数多くの課題がある場合、すべてを改善・解決しようと並行して動くのではなく、重要度を考えて優先順位を決めることも大切です。

現状を分析するには、自社に合ったフレームワークを活用するとよいでしょう。効果的に分析が進められます。よく用いられるのはSWOT分析です。内部環境と外部環境のそれぞれで自社にプラスに働く要因・マイナスに働く要因を書き出していき、自社の強みや弱み、チャンスやリスクを把握する手法です。

 

2-5.経営戦略

経営戦略とは、経営目標を達成するために実際にとる方策、戦い方の策略を指します。現状分析を行い、市場の状況や自社の特性、強みと弱みを正確に理解した上で、効果的な戦略を立てます。戦略を立てずに漫然と経営していても、市場を勝ち抜くことは難しいでしょう。

なお、経営戦略には以下の3つのレベルがあります。それぞれのレベルで綿密かつ確度の高い戦略を立て、推し進めることが重要です。

  • 企業戦略:企業全体での長期的な方向性を決める戦略
  • 事業戦略:事業内容ごとに定めた戦略
  • 機能戦略:マーケティングや研究開発など、会社における機能組織ごとに定める戦略

 

まとめ

経営計画書は、会社の将来像を経営戦略や方針などとともに明記したものです。経営計画書を作成すると、社外の人に事業計画を示し資金調達にも役立てられる他、社員に目標や行動方針を共有できるメリットもあります。

経営計画書を書くときは、信頼を得られるよう一貫性のある内容にすることが大切です。明確な目標を記載し、それを実現できる経営戦略を立てることで、会社の進む道を他者に伝えやすくなります。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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