税務情報
2023.12.07
税理士に相談できることは何?相談内容や公認会計士との違いも解説
税理士は、税務の専門家として、確定申告や節税対策、事業承継など、幅広い分野をサポートしてくれる存在です。たとえば記帳代行を依頼すると、日々の会計記録の管理や帳簿の作成を任せられ、事業主は会計業務にかかる時間と労力を節約できます。
税理士に相談できる具体的な内容や、公認会計士との違いについて、詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか。この記事では税理士が行える業務の範囲や、公認会計士との違いを分かりやすく解説します。
1.税理士に相談できることは?
税理士とは、税務に関する専門家で、日本における国家資格の1つです。税理士は、個人や企業の税務に関する代理、相談、税務書類の作成などを行います。具体的には以下の3つの業務が、税理士の独占業務です。
・税務代理
納税者に代わって、所得税、法人税、消費税などの税務申告を行うことができます。
・税務書類の作成
確定申告書、申告書の添付書類、年末調整に関する書類など、税務に関連する各種書類を、納税者に代わって作成することができます。
・税務相談
税金の計算方法、節税対策、税務調査への対応など、個人や企業からの税務に関する相談に応じることができます。
出典: 日本税理士会連合会「税理士とは」
税理士は、税法の専門的知識を持ち、個人や企業が適切に税務申告を行い税法を遵守することを支援する存在です。以下では、独占業務や独占業務以外の内容も含めて、税理士に相談できる内容について紹介します。
1-1.確定申告
税理士に確定申告を依頼することで、節税面に配慮してくれたり、正確さを担保できたりするメリットが得られます。税理士は専門的な税務知識を有しており、細かな法律の改正にも対応してくれるため、適切な申告書を作成してくれます。また、確定申告書に税理士の署名をしてもらうことにより、税務署からの問い合わせがあった際に税理士に対応を任せることができるため、提出後の負担軽減にもなるでしょう。
確定申告は複雑で時間を要する作業ですが、税理士に依頼することで正確かつ信頼性の高い申告を行えます。
1-2.税務調査への対応
税務申告が正しく行われているかを確認するために、税務調査が行われる場合があります。税理士は納税者の代理人として、税務調査の各段階でサポートをしてくれます。
・税務調査が始まる前
税理士は必要な書類を整える手助けや、調査官から受ける可能性のある質問に対する準備をしてくれます。
・税務調査当日
税理士は納税者とともに調査に立ち会い、必要に応じて調査官と直接対話してくれます。
・税務調査後
税務調査で指摘された問題に対して、適切な対応策を提案してくれます。
税務調査では、明らかな非違事項に対する指摘はもちろんですが、グレーな部分や誤解を招く可能性のある会計処理を指摘されるケースも多くあります。税理士に依頼しない場合、納税者はこれらのプロセスを自分で行う必要があるので負担がかかります。
1-3.記帳代行
記帳代行は、個人事業主や企業が日々の帳簿作成を税理士に委託することを指します。記帳代行を利用することで、経営者は本業により集中できることとなります。
記帳代行では、税理士が企業の売上や経費などの取引記録を適切に帳簿に記録するほか、領収書や請求書などの証憑管理を行ってくれる場合もあります。税理士は専門的な知識を持っているため、税務上の適切な処理を行い、誤りのない帳簿を作成できます。
1-4.月次決算
月次決算とは、毎月の経営成績や財務状況を把握するために行う決算作業のことを指します。月次決算を通じて、企業は経営の健全性を定期的にチェックし、必要な経営戦略の修正や意思決定を行うことができます。
具体的には、税理士は企業の帳簿や記帳データを基にして、正確な損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を作成します。財務諸表を確認し、企業はその月の収益や費用、資産や負債の状況を正確に把握することが可能です。
月次決算は、年次決算とは異なり法的義務はありません。そのため、実施するかどうかは企業の自由です。しかし、月次決算によって月ごとの財政状況を明らかにできれば、素早い経営判断がしやすくなります。
1-5.経営のサポート
税理士は経営の専門家ではないものの、企業や経営者からの経営相談を受けている税理士もいます。定期的な財務報告や月次決算を通じて、企業の収益性、流動性、財務健全性などを明確にし、経営者が正確な情報に基づいた意思決定を行えるよう支援します。
また、税理士は節税対策や税務戦略の立案もサポートしてくれる存在です。税法の専門知識を活用して、企業が法令を遵守しつつ最適な経営戦略を取れるよう支援し、不必要な税負担を避けるためのアドバイスを提供してくれます。
1-6.節税のサポート
税理士は税法の専門家として、法律の範囲内で最適な節税対策を提案し、納税者が不必要な税金を支払うことを避ける手助けをしてくれる存在です。
税理士はまず、クライアントの事業や財務状況を詳細に分析し、現在の税負担を把握します。この情報を基に、節税の機会を特定し、具体的な節税策を提案してくれます。たとえば、所得控除や税額控除の適用、資産の適切な評価、経費の最大化など、さまざまな方法が考えられます。
また、税理士は法令改正等や新しい税制度に常に注意を払い、クライアントに最新の情報を提供してくれる存在です。新しい税制度の適用や時限立法による節税機会を逃さないようにすることも、税理士の重要な役割です。
1-7.事業承継
税理士の顧問先は、中小企業や小規模企業が中心です。日本税理士会連合会によれば、経営者の7割は、顧問税理士などを経営における問題の相談相手と考えているそうです。
事業承継は、経営上の大きな問題の1つです。税理士は事業承継をスムーズに進めるためにさまざまな支援をしてくれます。
具体的には、税理士は事業承継の計画立案段階から関与してくれ、事業の現状分析、後継者の選定、承継方法の選択など、事業承継に関わる各種の意思決定をサポートします。承継計画の策定にあたっては、事業の持続可能性や将来の成長戦略を考慮し、後継者のビジョンや能力に合わせたアドバイスを行ってくれます。
ほかにも、税理士は事業承継に伴う税務上の影響を詳細に分析し、税負担を最小限に抑えるための戦略を提案します。提案には相続税や贈与税の計算、適切な資産評価方法の選択、税制上の優遇措置の活用などが含まれます。また、事業承継に伴う資産の移転や株式の譲渡に関する税務処理もサポートします。
2.税理士と公認会計士に相談する内容の違いは?
税理士と公認会計士は共に会計分野の専門家ですが、税理士と公認会計士の職務内容には明確な違いが存在します。
税理士は税務に関するエキスパートであり、税務代理、税務書類の作成、税務に関する相談が税理士の独占業務です。税理士は、個人や企業の税務申告を代行し、税務に関するアドバイスを提供します。たとえば、個人事業主や中小企業が確定申告を行う際には、税法の複雑さから税理士に助言を求めることが一般的です。
一方で、公認会計士の独占業務は財務書類などの監査業務です。上場企業や大企業は、上場維持や資金調達のために公認会計士の監査を受けることが必要です。会計監査が必要な企業は限られており、公認会計士の主な顧客は上場しているような大企業となります。
したがって、通常の税務処理について相談したい場合は税理士に、財務書類の監査や大規模な企業の財務に関する相談が必要な場合は公認会計士に相談すると良いでしょう。
まとめ
税理士に相談できることは、税務代理・税務書類の作成・税務相談など、多岐にわたります。
たとえば記帳されたデータを基にして、正確な決算書を作成し、税務申告のサポートを依頼することが可能です。節税においては、単に税金負担を減らすための助言を行うだけではなく、クライアントが安心して事業運営に集中できるように、税務上のリスクを管理してくれます。適切なアドバイスを提供してくれる税理士は、クライアントの財務的な健全性と成長を支えます。
監修者情報
税理士法人スマッシュ経営
杉田 透(すぎた とおる)
資格:税理士
経歴
- 1959年
- 愛知県豊田市生まれ
- 1980年
- 名古屋国税局採用
- 2010年
- 法人税担当統括官
- 2020年
- 名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる