税務情報
2022.12.26
ふるさと納税は節税にならない?仕組みやメリット・納税の流れを解説
地域の名産品が楽しめることでも有名なふるさと納税は、寄付をすることで自己負担額の2,000円を除いて所得税や住民税の還付・控除が受けられます。また、各自治体が用意する名産品や日用品を受け取れるのも魅力です。
税金の還付や控除が受けられるため、ふるさと納税をすることが節税対策になると思っている人も多いでしょう。しかし、ふるさと納税は節税対策にはならないため、利用の際は勘違いしないよう注意が必要です。
今回は、ふるさと納税の仕組みやメリットを詳しく解説します。ふるさと納税に興味がある人はぜひご覧ください。
1.ふるさと納税は節税になる?
ふるさと納税は、生まれ故郷や学生時代を過ごした街など、自分が特に応援したい自治体に寄付ができる制度です。返礼品がもらえるなどお得な制度ではありますが、節税につながるものではないので注意が必要です。
ここでは、ふるさと納税の仕組みや、お得な制度だと言われる理由について解説します。
1-1.ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税には「納税」の文字がありますが、実際には「寄付」する制度です。ふるさと納税制度を使って任意の地域に寄付すると、返礼としてその地域の名産品がもらえます。また、寄付金額から自己負担額の2,000円をのぞいた残額分が、所得税や住民税から還付・控除されます。
税金から控除されると言っても、控除される額に近い額を先に寄付金として払っている状態です。iDeCoなどとは違い、ふるさと納税に節税効果はありません。iDeCoは積み立て金額(掛け金)が所得金額から控除されるため、所得税の還付や住民税の軽減措置が受けられることで節税対策になります。
なお、所得税・住民税の還付・控除を受けるためには、ふるさと納税後に確定申告が必要です。会社員の場合は、その年の寄付先が5団体以内の場合に限り、各自治体に申請すれば確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の利用が可能です。
1-2.ふるさと納税のメリット
ふるさと納税は直接的な節税にはならないものの、多くのメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるか見ていきましょう。
・返礼品がもらえる
ふるさと納税の魅力の1つが、返礼品がもらえることです。各自治体は趣向を凝らしたさまざまな種類の返礼品を用意しており、寄付金額の3割以内の価格のものであれば自由に選べます。
仮に10万円を寄付したとすると、2,000円を引いた9万8,000円分の税金控除が受けられ、さらに3万円程度の返礼品が受け取ることが可能です。10万円払って「9万8,000円の控除」+「約3万円分の返礼品」が受け取れるため、実質2万8,000円ほどお得と言えます。
・寄付金の使い道を指定できる
ふるさと納税では、各自治体が提示する「寄付の使い道」が選択可能です。寄付の使い道は子育て支援や自然保護、医療・福祉の充実など多岐にわたり、自治体によって異なるのが特徴です。寄付先を使い道によって選ぶことで「有意義に使ってほしい」という希望が叶います。
・縁のある地域を応援できる
ふるさと納税は、寄付先を任意で選べます。寄付を通し、故郷や学生時代を過ごした街、思い出の場所といった縁のある地域を応援できます。
2.ふるさと納税の流れ
ふるさと納税を通して寄付をしても、手続きをしなければ税金の控除は受けられません。税金の控除を受けるためには確定申告が必要です。一定の条件を満たしていれば、より手軽な「ワンストップ特例制度」を利用することもできます。
ワンストップ特例制度 |
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2-1.確定申告を行う場合
確定申告を行う場合の流れは、以下の通りです。
STEP1:ふるさと納税をする | 応援したい自治体を選び、寄付します。自治体から返礼品と「寄附金受領証明書」が届くので、受領証明書をなくさないよう大切に保管しましょう。返礼品や寄付金受領証明書が届く時期は、選んだ返礼品や自治体によってさまざまです。 |
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STEP2:確定申告する |
ふるさと納税を行った翌年の2月16日~3月15日の間に、住まいのある地域を管轄する税務署で受領証明書を添付して確定申告します。 なお、2022年より、特定事業者として指定を受けたふるさと納税サイトでは「寄附金控除に関する証明書(電子データ)」の発行が可能になりました。特定事業者が発行する「寄附金控除に関する証明書」があれば、e-taxを使ってオンラインで確定申告ができます。 |
STEP3:所得税から還付・控除される | ふるさと納税をした年の所得税から控除されます。源泉徴収などですでに所得税を納めている場合は、確定申告の1~2か月後に還付されます。 |
STEP4:住民税から控除される | ふるさと納税をした翌年度の住民税が減額されます。 |
2-2.ワンストップ特例制度を利用する場合
ワンストップ特例制度を利用する場合の流れは以下の通りです。
STEP1:ふるさと納税する |
応援する自治体を選び、寄付します。その際に、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の申請書を提出しましょう。申請書は、ふるさと納税サイトからダウンロードするか、自治体に連絡して直接もらいます。 一部の自治体では、マイナンバーカードを利用したオンライン申請も可能です。対応しているかどうかは各自治体に問い合わせましょう。 |
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STEP2:住民税から控除される | ふるさと納税をした翌年度分の住民税が減額されます。ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からの還付や控除はなく、その分も含めた額が住民税の減額として控除されます。 |
3.ふるさと納税の注意点
ふるさと納税は返礼品が受け取れるお得な制度ですが、利用にあたってはいくつか注意点があります。注意点を知らずにふるさと納税をすると、損をすることにつながりかねないため気を付けましょう。
ここでは、特に注意すべきポイントを2つ取り上げて解説します。
3-1.控除の上限額が決まっている
ふるさと納税は、寄付金から自己負担額の2,000円を引いた全額が所得税・住民税から控除されるお得な制度です。ただし、多額の寄付をすれば税金が無制限に控除されることはなく、上限額が設定されています。
上限額は、本人の収入や子どもの数などによって決まります。たとえば、本人の給与収入が300万円で、収入のない配偶者がいる家庭(夫婦のみ)の場合、控除の上限額の目安は1万9,000円です。仮に5万円を寄付したとすると、1万9,000円が控除され、残りの3万1,000円分は控除されません。単に3万1,000円のお金を寄付しただけになるので、ふるさと納税をする際は控除の上限額に収まるようにするのがポイントです。
控除額上限は、各ふるさと納税サイトで確認可能です。ただし、ふるさと納税サイトに記載されている額はあくまで目安であり、状況によっては違うケースもあります。正確な金額を知りたいときは、住んでいる自治体に直接問い合わせましょう。
3-2.控除されるまで時間がかかる
ワンストップ特例制度の申請や確定申告をしても、税金が還付・控除されるまでには一定の時間が必要です。
所得税の還付を受ける場合は、確定申告後1~2か月ほどで指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。
住民税の場合は、ふるさと納税をした翌年度の納税額が減額される形で控除されます。いくら控除されたかは、5~6月ごろに送付される「住民税決定通知書」で確認しましょう。会社員の場合は、会社から渡される「給与所得等に係る特別市(区)民税・県(都・府・道)民税 特別徴収税額の決定通知書」で確認が可能です。
まとめ
ふるさと納税は、返礼品がもらえたり所得税や住民税が控除されたりするお得な制度ですが、節税になるわけではありません。ふるさと納税をすることで直接的な節税にはつながらないものの、多くのメリットが得られます。ふるさと納税をお考えの際は、返礼品のほかに自治体が力を入れている取組にも注目してみてください。
また、控除には上限額があり、控除されるまでにも時間がかかるため注意が必要です。注意点を理解した上で、各自治体の名産品を楽しみましょう。
監修者情報
税理士法人スマッシュ経営
中垣 泉(なかがき いずみ)
資格:税理士
経歴
- 1951年
- 愛知県豊田市生まれ
- 1974年
- 名古屋国税局採用
- 1992年
- 法人税担当統括官
- 2012年
- 名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 岡崎オフィス入社
社員税理士となる - 2019年
- 税理士法人スマッシュ経営
岡崎オフィス所長就任 - 2021年
- 岡崎オフィス所長兼代表社員へ就任