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2022.12.28

セルフメディケーション税制と医療費控除はどっちが得?違いを解説

セルフメディケーション税制は、2017年1月1日からスタートした税制です。医療費控除は知っているものの、セルフメディケーション税制のことがよく分からない方も多いのではないでしょうか。

セルフメディケーション税制と医療費控除は、利用条件や控除限度額が異なります。そのため、対象者はそれぞれの制度の内容を理解すればお得なほうを選んで申告することが可能です。

当記事では、セルフメディケーション税制と医療費控除の違いを詳しく解説します。確定申告で医療費控除の利用を考えている方は、ぜひご覧ください。

 

1.医療費控除・セルフメディケーション税制とは?

医療費にかかわる節税制度として、医療費控除とセルフメディケーション税制があります。それぞれ対象となる医療費や控除額の計算方法などが異なるため、医療費を一定額支払っている場合は2つの制度を理解しておくことが大切です。

ここからは、医療費控除とセルフメディケーション税制に関して詳しく解説します。どちらの制度を利用すればいいか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

 

1-1.医療費控除とは?

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間で、一定額以上の医療費を支払った際に受けられる控除のことです。

具体的には、本人または扶養家族のために支払った医療費が1年間で10万円を超えた場合、その医療費を元に計算した金額を所得から差し引くことができます。医療費控除は、支払った医療費がそのまま戻ってくるわけではなく、医療費に応じて支払うべき税金を計算し直すことができる制度です。

医療費控除を申請したい場合、確定申告が必要になります。確定申告の義務がある個人事業主はもちろん、会社員であっても、確定申告をすることによって医療費控除の申請が可能です。

出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

 

1-2.セルフメディケーション税制とは?

セルフメディケーション税制とは、OTC医薬品の購入費用が高額になった場合、一定の条件を満たしていれば医療費控除の特例として所得控除を受けられる制度です。

OTC医薬品とは、要指導医薬品および一般用医薬品の中で、医療用から転用された医薬品を指します。簡単に言えば、ドラッグストアや薬局等で購入できる「医師の処方箋が必要ない薬」のことです。

ただし、すべてのOTC医薬品がセルフメディケーション税制の対象となるわけではありません。厚生労働省が指定する特定の成分・薬効が含まれる薬のみが対象医薬品に該当します。

なお、セルフメディケーション税制を申告するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  • 1年間でOTC医薬品を1万2千円以上購入していること
  • 1年間で健康診断や特定健康診査(メタボ健診)を受けていること

出典:日本一般用医薬品連合会「知ってトクする セルフメディケーション税制」

出典:厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」

 

1-3.医療費控除とセルフメディケーション税制の違い

医療費控除の対象となるのは「医療行為に支払った費用」です。病院での診療費や病気・けがの治療費・入院費・医薬品の購入費はもちろん、松葉杖等の医療器具の購入費や、通院に必要な交通費等も医療費控除の適用範囲となります。ただし、医療費控除の対象となるのは医療費が1年間に10万円を超えた場合のため、申請のハードルはやや高いと言えます。

一方で、セルフメディケーション税制で対象となるのは、ドラッグストア等で購入できるOTC医薬品です。1年間でOTC医薬品を1万2千円以上購入した場合に利用できる制度のため、医療費控除に比べて申請のハードルが低いというメリットがあります。

セルフメディケーション税制は、医療費控除の一部です。そのため、申請手続きの際に確定申告書が必要であることは、医療費控除とセルフメディケーション税制とで共通しています。

ただし、医療費控除の申請の際には「医療費控除の明細書」が、セルフメディケーション税制の申請の際には「セルフメディケーション税制の明細書」が必要です。それぞれ必要な添付資料が異なるため注意しましょう。

 

2.医療費控除とセルフメディケーション税制の計算方法は?

医療費控除とセルフメディケーション税制は、それぞれ計算方法が異なります。医療費控除とセルフメディケーション税制の計算式は、以下の通りです。

・医療費控除

1年間で支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-100,000円もしくは所得金額の5%のうち少ない金額=医療費控除額(控除限度額2,000,000円)

・セルフメディケーション税制

1年間で支払った、セルフメディケーション税制の対象となるOTC医薬品購入費-保険金などで補てんされる金額-12,000円=セルフメディケーション税制にかかる医療費控除額(控除限度額88,000円)

なお、医療費控除やセルフメディケーション税制で軽減される税額は、対象者に適用される税率によって異なるため注意してください。また、「保険金等で補てんされる金額」とは、生命保険や損害保険から支払いを受けた医療保険金・入院費給付金等を指します。

医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらを申請した場合でも、申請にかかわる領収書やレシートは5年間の保存義務があります。税務署長から医療費やセルフメディケーション税制の申請に関する書類の提示を求められた場合、領収書やレシートを提示または提出する必要があるため大切に保存しておきましょう。

 

3.医療費控除とセルフメディケーション税制の使い分け方

医療費控除とセルフメディケーション税制は、併用ができません。そのため、医療費の支払い状況に応じて、自分自身で制度を使い分ける必要があります。

一般的には、市販薬の購入金額が多い方はセルフメディケーション税制を、病院にかかることが多く、医療費が年間10万円を超える方は医療費控除を受けるとよいでしょう。

医療機関を頻繁に利用する方の中には、限度額の高い医療費控除を申請したほうがお得だと感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、医療費の支払い状況によっては、セルフメディケーション税制を活用したほうが多く控除を受けられるケースもあります。どちらの制度を利用すればより節税になるかは、ケースバイケースです。

 

3-1.実際の金額をシミュレーションする

医療費控除とセルフメディケーション税制のうち、節税効果が高いのはどちらかを考えるためには、シミュレーションをして具体的な数字を比較する必要があります。

例として、以下の家庭における、医療費控除とセルフメディケーション税制の金額をシミュレーションしてみましょう。

  • 会社員の夫、専業主婦の妻、小学生の子供2人の4人家族
  • 世帯の所得は年間400万円
  • ドラックストア等でのOTC医薬品購入額は年間5万円
  • 医療機関での自己負担額は年間8万円

上記の家庭の場合、医療費控除とセルフメディケーション税制の金額シミュレーションは以下の通りです。

・医療費控除

控除額=医療費(50,0000円+80,000円)-100,000円=30,000円
所得税の減税額=30,000円×20%=6,000円
住民税の減税額=30,000円×10%=3,000円
減税額の合計9,000円

・セルフメディケーション税制

控除額=OTC医薬品購入額50,000円-12,000円=38,000円
所得税の減税額=38,000円×20%=7,600円
住民税の減税額=38,000円×10%=3,800円
減税額の合計11,400円

上記で例に挙げた家庭では、OTC医薬品の購入額に比べて、医療機関での自己負担額のほうが多くなっていました。しかし、減税額のシミュレーションをすると、医療費控除を受けた場合よりも、セルフメディケーション税制を利用したほうが2,400円多くなっています。

このように、医療費等に支払った金額は同じでも、セルフメディケーション税制を利用したほうが節税になる場合があります。どちらの制度を利用するかを決めるためにも、まずは料金シミュレーションを実施しましょう。

 

まとめ

セルフメディケーション税制と医療費控除は、一概にどちらがお得とは言えません。しかし、条件を満たした上で申告すれば所得控除を受けられますので、それぞれの条件を理解しておくことが大切です。

セルフメディケーション税制と医療費控除のどちらを活用したらよいか分からない場合は、実際の金額シミュレーションしてみることをおすすめします。シミュレーションによって産出された減税額を参考に、お得になる制度を利用しましょう。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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