労務情報
2022.06.02
知っていますか?
パワハラ防止措置の義務化
~令和4年4月1日から中小企業や個人事業主も対象です!~
パワハラ防止措置の義務化はいつから?
令和2年6月1日に「改正 労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」が施行されました。令和4年3月31日まで中小企業においては努力義務とされてきた、企業がパワハラを防止するために講ずべき4つの措置が、令和4年4月1日から義務化されました。
どんな行為がパワハラになるのか
法律では次の3つの要素すべてを満たす行為を「パワハラ」と定義しています。
① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③ 労働者の就業環境が害されるもの
※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。
【 パワハラに該当する6つの行為 】
パワハラの現状
令和2年10月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は31.4%でした。また、受けたパワハラの内容は、以下のとおりです。
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」より作成
男女別でみると、「過大な要求」の割合は男性の方が女性より高く、「人間関係からの切り離し」や「個の侵害」の割合は女性の方が男性より高くなっています。
事業主が取り組むべきパワハラ防止のための措置とは
令和4年4月1日から義務化された、事業主が必ず講じなければならない具体的な措置は以下の4つです。
1. 事業主の方針等の明確化及び周知・啓発
職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、行為者には
厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等に定め、労働者に周知・啓発すること
2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
3. 職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切ない対応
事実関係を迅速かつ正確に把握するとともに、事実関係の確認ができた場合には、速やかに
被害者に対する配慮のための措置および行為者に対する措置を適正に行うこと
再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も含む)
4. 併せて講ずべき措置
相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、また、相談したこと
等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する
こと
※労働者が事業主に相談したこと等を理由として、事業主が解雇その他の不利益な取り扱い
を行うことは、労働施策総合推進法において禁止されています。
また、義務ではないが職場におけるパワハラ防止等のための望ましい取り組みとして、以下の項目が厚生労働省より明示されています。
・パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、単独ではなく複合的に生じることも想定し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備すること
・職場におけるパワーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取り組みを行うこと(コミュニケーションの活性化のための研修や適正な業務目標の設定等)
・職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を行う際に、自ら雇用する労働者以外に以下の対象者に対しても同様の方針を併せて示すこと
‣他の事業主が雇用する労働者
‣就業活動中の学生等の求職者
‣労働者以外の者(個人事業主などのフリーランス、インターンシップを行う者、教育実習生等)
・カスタマーハラスメントに関し、以下の取り組みを行うこと
‣相談体制の整備
‣被害者への配慮のための取り組み
(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に対して1人で対応させない等)
‣被害防止のための取り組み(マニュアルの作成や研修の実施等)
まとめ
昨今は、パワハラに限らず様々な「ハラスメント」が問題となってきています。今回のパワハラ防止措置の義務化などの改正について、「知らなかった」ではすまされません。事業主の方々には、正しい情報を仕入れ、時代に合った変化・対応が求められています。今一度、自社の体制が万全かどうか確認してみましょう。
【 参考 】
厚生労働省:職場におけるハラスメントの防止のために